かながわ考古学財団では、主に公共事業開発によって失われてしまう遺跡(埋蔵文化財包蔵地)の記録を保存するための発掘調査を行なっています。
神奈川県内には約8,000箇所に及ぶ遺跡が存在しています(平成29年12月31日現在)。遺跡と一口にいっても、色々な種類(集落跡、貝塚など)、いろいろな時代(旧石器から近世、その他)の遺跡がありますが、ここでは台地上にある集落跡の遺跡の発掘についてご紹介します。
1.表土の掘削
油圧ショベルなどの建設機械で遺構(過去の建築物、工作物のことをいいます。具体的には竪穴住居址など)が含まれていない表層の土を剥がすように取り除きます。
この段階では、発掘調査というより、まるで建設現場のようです。
2.遺構の確認
建設機械で表層の土を取り除いたあと、薄く慎重に遺構のある深さまで土を剥がすように掘り進んでゆきます。
画像では鋤簾(じょれん)という農作業などで使われる道具を使っています。
3.遺構の掘削
遺構(過去の建築物、工作物のことをいいます)が発見されました。
竪穴住居址です。
画像は移植ゴテですこしずつ掘削した土を、箕(み)(大きなちりとりのような道具)に集めている様子です。
4.遺構の図面作成
竪穴住居址が掘りあがりました。
後に報告書に掲載する図版の作成のため、遺構の向いた方角、大きさや深さを図面(平面図や断面図など)に記録してゆきます。
5.遺構・遺物の測量
発見された遺構や遺物(土器や石器、木製品、金属製品など)が地球上のどこに位置する(緯度や経度や海抜)のか、測量して座標を記録します。
6.写真撮影
やぐらの上から、遺構の写真を撮影します。
遺構の形がはっきりわかるように、高いところから撮影します。
このような発掘調査の結果は、現場見学会を開催して状況を見学していただいたり、成果発表会や成果展示会を通じてお知らせしています。
7.遺物の洗浄・注記
ここからは、屋内の作業に移ります。
現地から持ち帰った遺物は土を落とし、ブラシなどでていねいに水洗いをします。
そして、遺跡のどこから出土したかがわかるように、面相筆という細い筆とポスターカラーを使って、出土した位置を記号化して遺物の一点一点に記入します。
8.遺物の分類・接合
遺物の特徴や時代により分類し、接合し復元をしてゆきます。パズルみたいなものですが、足りない部分は石膏などで埋めてゆきます。
同じ竪穴住居址から発見された遺物だけが接合するだけではなく、ときには他の遺構のものと接合したりすることもあります。
9.遺物の図化・写真撮影
復元した遺物の写真と、図面(実測図)を作成します。画像は同じ遺物の写真(左)と図面(右)を並べたものです。
実測図には、器の厚み、器の外側や内側の状態(デザイン・模様・制作技法ほか)など、写真には写りにくい特徴も記載します。
10.遺構図版の作成
4.で行ったように現地で測量した記録から、遺構の図版を作成します。
これは、4箇所の柱穴があり、西壁(図面の上)にかまどをもった竪穴住居址です。
南西の角(図面の左上)には貯蔵のための穴が掘られています。
11.調査報告書の刊行
これらのデータをもとにして原稿を執筆し、調査報告書を刊行します。
刊行された報告書は、地域の教育委員会、図書館などに配布され、皆さんが活用できるように公開されています。
公開することで初めて、発掘調査が完了するのです。